プロジェクトの経緯
まずはプロジェクトページをご覧ください。
阿部梨園の100件を超える小さい改善ノウハウを公開するオンライン知恵袋を作りたい – CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
阿部梨園の取り組んできた事例を公開したい!
私たちが経営改善に取り組み始めた当初、何から着手したらいいかわかりませんでした。仕方ないので、自分たちなりに業界内外から情報をかき集め、思いついたものから手さぐりで実践していました。ドンピシャな情報にたどり着くまで時間がかかるので、着実に進めつつも、足を引きずるような鈍足感を感じていました。
いつしか、阿部梨園の取り組みを聞きつけた生産者の方々が来園されるようになります。そこで気づいたのは、みんな同じようなことで悩み、足を止めているということです。簡単なことなのに、やったことがないから、どうしたらいいかわからない。他の人はどうしているかわからない。法人化した、立派な農業経営者の体験談は真似できるとは思えない。
たまたま阿部梨園は、実施した小さな改善を全て記録していました。これを公開すれば、参考程度であっても、同業の生産者のみなさまの役に立つかもしれないと考えるようになりました。そこで、インターネット上で誰でも閲覧できる、全て無料の新規ウェブサイト(オウンドメディア)として公開することに決めました。
無料公開、オープン化のねらい
元は阿部梨園が自身の商売を差別化するために積み上げてきたノウハウです。常識では、差別化要因は隠すものであり、公開するなら対価を得るべきです。私たちも、有料の情報商材や教本化、セミナー業など収益化の選択肢があることはわかっていました。しかし、いくつかの理由で、まずは無料で公開しようと決めました。
かき集めてきた情報である
一つひとつを見ると、私たちが独自にひらめいたものは多くありません。世の中で一般的に実践されているテクニックを取り込んだものがほとんどです。それに値札をつけるのは抵抗がありました。(とはいえ、農家というフォーマットで実践した実例であるという付加価値は上乗せできていると思っています)
無料であることで波及させたい
無名な私たちの情報に対して対価を払う方が多くないことは容易に想像できました。それがボトルネックになって情報が拡散しなければ、多くの方の役に立つことはできません。また、農業界では、情報などのかたちが残らないものに対価を払う意識が高くないのもよく知られていることです。しかも1円でも課金すれば決済が発生し、その手間を煩わしく思う方も多いでしょう。
有益な情報は有料であれば世の中に十分に存在します。素晴らしい書籍、講座はたくさんありますし、専門家も多くいらっしゃいます。
経済的な余裕のある方だけ、経営に意識の高い方だけに活用してもらうことは、期待するところではありません。むしろ、余裕のない方、経営に無頓着だった方に目線を上げていただくことに貢献できればと考えています。
オープンにする文化を持ち込みたい
世の中では、隠すのではなく共有化し合う、オープン化の流れが進んでいます。ITの業界では、有用なテクニックやツールを積極的にオープン化し、全体に対して貢献した人が報われる文化が生まれています。
大手の生産法人はノウハウを着実に積み上げ、最新技術を導入し、規模の経済で優位に立ちつつあります。それに対して、個人農家が単体で情報収集し、試行錯誤するのは非効率です。情報を共有し合うバーチャルな共同体となることが、生存戦略の一つではないでしょうか。
※昔も今も、農協や行政の下で、個人農家は共同体的に存在しています。しかし、生産者が減り続けている現状では、多用なアプローチが必要だと思っています。
クラウドファンディングのねらい
まず、農家の経営改善ノウハウは必要とされているかどうか確信がありませんでした。身近な範囲ではニーズを掴んでいましたが、オープンにまでする必要があるかはわかりませんでした(①)。
また、私たちは無名の個人農家です。無策で情報を公開しても話題にならず、役に立たないまま放置される可能性が高いです。それは単なる露出狂です(②)。
そして、事例を公開するにあたって、実例をまとめ直すのは非常に工数がかかります。情報に対する対価はゼロなのに、制作工数分の持ち出しが発生します(③)。
いろいろ考えたところ、上記3点の課題は、クラウドファンディングをうまく活用すれば、一網打尽できると気づきました。
ねらい①:需要があるかどうか確かめる
クラウドファンディングで支援が多く集まれば必要があると言えますし、集まらなければ不要ということになります。つまり、テストマーケティングとして活用できると考えました。
ねらい②:「農家がノウハウを公開するクラウドファンディングって何なの?」と話題にしてもらう
クラウドファンディングはメディアに取り上げてもらいやすかったり、SNSで拡散してもらいやすい特性があります。期間限定のプロジェクトで、公に資金調達を呼びかけるからこそ、話題が生まれるのではないかと考えました。
また、プロジェクトの成否にかかわらず、「農家の経営は今後どうあるべきか」という話題提起になれば、それだけでも価値があると考えました。
ねらい③:制作費用を寄付してもらう
共感してくださった方からクラウドファンディングを通して経済的に支援していただければ、費用の持ち出しをまかなえると考えました。せめて赤字ではない条件でないと、オープン化自体を阿部に許してもらう道理もありませんでしたので。。
ねらい④:仲間が増える
支援者にとっては「オレ/私の支援したプロジェクト」になるので、自分ごととしてこのプロジェクトを推進していただけるのではないかと考えました。一緒にプロジェクトを波及させてくれる仲間がに出会えればという期待もありました。
プロジェクトの概要
そこで、周囲と相談してすぐにプロジェクトを立ち上げました。2017年の10月に思いついたのですが、オフシーズン中に目処を立てるために、すぐに取り組む必要がありました。
- タイトル:阿部梨園の100件を超える小さい改善ノウハウを公開するオンライン知恵袋を作りたい
- 募集期間:2017年11月13日~同12月25日
- 目標金額:100万円
- 募集方式:All-in(達成しなくても履行される)
- キャッチ:農家の『こんなこと恥ずかしくて人に訊けない』をまとめて解消したい!!
阿部梨園の100件を超える小さい改善ノウハウを公開するオンライン知恵袋を作りたい – CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
リターン
応援のみ、梨の商品、オリジナルポロシャツ、バナー掲載、取材記事掲載、梨園見学、出張コンサル、出張講演/勉強会などです。
出張コンサルや講演/勉強会などは、経営と向き合う機会を、支援者にも実際に体験してもらおうと用意しました。
ストレッチゴール
目標金額100万円で100件を公開するのが当初の設定でしたが、100件ではまだ不十分で、総数500件から使えるものを厳選しても300件程度までは公開できると考えていました。そこで、「X万円につきX件公開」という延長ゴールを設定しました(300万円まで)。
実際には300万円も超えることになったので、その先は「変わりたい生産者と応援したい方が集うコミュニティづくり」という追加目標を設定しました。
プロジェクトの特徴
一般的なクラウドファンディングのプロジェクトと比べて、2つの点でユニークな設計になりました。
ユニークな点①:支援してもしなくても、すべての人が成果物を活用できる
一般的なクラウドファンディングでは、支援者は見返りとして成果物を受け取ります。今回の成果物であるウェブサイトは、支援していない方でもすべて無料で閲覧可能です。つまり、フリーライド(タダ乗り)可能な設計です。自分が負担しなくても誰かが支援すれば利益を得られる仕組みです。どれほどの方が支援してくださるか未知数でしたが、最終的には想像以上のご支援をいただきました。
ユニークな点②:リターンの割合が低い
弊園は直売率ほぼ100%でしたので、梨を売るクラウドファンディングでは利益が出ないというジレンマがありました。
そこで、梨のリターンは売価の2倍程度に設定させていただきました。割増し分が寄付になります。他も、出張コンサルやバナー掲載などの梨を使わないコースと、リターンなしの「応援のみ」コースとしました。
4,000円の応援のみコース以外はすべて10,000円以上のコースでしたから、1口が高額なクラウドファンディングでもありました。
つまり、寄付要素の強い高額なプロジェクトになりました。「お得!」なプロジェクトではなかったので、損得勘定を超えて寄付してくださった支援者のお気持ちは確かなものであり、そのような方々とつながることができたのは望外の喜びです。
プロジェクトの成果、反響
開始直後から爆速でご支援が集まり、最初の1週間で100万円のゴールテープを切りました。その後も順調に200万円、300万円へ到達し、最終的には450万円ほどのご支援をいただきました。生産以外の分野における情報不足と、ニーズの強さに手応えを感じます。意外なことに農業生産者ばかりではなく、日本の農業の存続と成長を望む一般の支援者からも多くの志を預りました。
メディアでの継続的な露出、プロジェクトの拡散
クラウドファンディングのプロジェクトを1人でも多くの方に知ってもらおうと、見よう見まねでプレスリリースを作成、配信しました。多くのメディアに取り上げていただき、新聞・テレビ・ラジオ・ウェブメディア…各種合わせて、のべ50件以上の取材を受けています。プロジェクトの存在だけでなく、農家の経営課題や課題解決に必要なノウハウやアクションについても、メディアによる情報拡散の恩恵を受けて全国の農業関係者に広く認知されることとなり、おかげさまで話題が話題を呼び、活動の輪が広がっています。ホリエモンチャンネルやNewsPicksにも取り上げられ、業界外からも認知されるようになりました。詳しい情報はメディア掲載/出演のページをご覧ください。
続きはこちら:メディア掲載/出演阿部梨園の知恵袋、リリース
2018年5月に約束どおり経営改善事例を「阿部梨園の知恵袋」というウェブサイトでリリースしました。話題になったおかげでハードルが上がり、制作は骨が折れ、時間もエネルギーも想定の倍以上要しています。。最初の記事100件を装填しておそるおそるリリースしましたが、各方面から盛大に好意的なリアクションを受け取って一安心でした。
以後、阿部梨園の知恵袋の存在は徐々に広く知られるようになり、多くの農業者のお役に立てている様子です。全国から感想や感謝の声が数多く寄せられています。「農家の経営改善と言えば『阿部梨園の知恵袋』」と認知されるまでになりました。
講演・セミナーの依頼が殺到、全国展開
阿部梨園の知恵袋プロジェクトが認知されるにつれ、講演やセミナーの登壇依頼が多く寄せられるようになりました。2018年は年間約50件、2019年には年間75件登壇しています。講演活動をとおして北海道から九州まで、さらに全国の賛同者の輪が拡大しています。
阿部梨園の経営改善手法は実践的で、誰でも明日から取り組める小さい事例集であることからも、特に小規模農業者向けの依頼が多いです。生産以外の分野を広くカバーしているため、各論のオーダーにも対応可能です。「農業はまだ万策尽きてない。課題の山は成長のポテンシャルだ」と農業経営に希望があることを述べ伝え、経営改善の種を蒔き続けています。
続きはこちら:講演、セミナーファームサイド株式会社を創業(旧FARMSIDE works)
ファームサイド株式会社は、佐川が阿部梨園で経営改善に4年間従事した経験と、阿部梨園の知恵袋としてオープン化した農業経営のノウハウを活用して、農業界の課題を解決するスピンアウト事業会社です。2019年1月に個人事業FARMSIDE worksとして開業、2020年1月に法人化しました。講演・セミナー・ワークショップは年間75件の登壇があり、企業や生産者さんのコンサルティングを並行しつつ、全国の産地で経営改善を伝道しています。
ファームサイド株式会社 – FARMSIDE Inc.|佐川友彦|農業界の課題解決