阿部梨園の経営改善は2014年9月から始まりました。このページでは、当時から今に至るまでの流れを、簡単に時系列で紹介します。

経営改善前夜

改善度(2014END)0%

2014年当時すでに、阿部梨園は多くのお客様に喜ばれていました。3代目が継いで10年が経ち、新しい技術を取り入れ、オリジナルパッケージを作り、百貨店などの取引先も増えました。ところが、経営や組織づくりでは課題を抱えていて、チャンスを生かしきれない状況でした。

2014年の初夏、当時勤めていた主力スタッフが退職することになりました。技術や情熱は共有できても、待遇や経営体質が変わらなければ、スタッフと長く一緒に仕事することは望めないと痛感します。

繁忙期の人手も手薄になってしまい、何から手をつければいいかもわからなかった阿部は、NPO法人の理事長を務める地元の後輩に相談を持ちかけました。それが、NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク(以下ユース)の岩井代表理事でした。相談した結果、ユースが実施している、地域の事業者と若者を結ぶ中長期のインターンシッププログラムで、阿部梨園に来てくれる若者を募集することにしました。「家業から事業へ」というフレーズを掲げた当初のインターンの内容は、販売促進や集客でした

前職を退職し、次の仕事を決めずに身一つで栃木に戻ってきた佐川は、インターネットでユースの存在を知り、連絡をとります。そして、阿部梨園のインターンシップの紹介を受け、応募することにしました。自身が農学部出身であったことから、農業の現場感や課題意識を体感しつつ、ローカルなつながりの中で次の仕事を決めるきっかけをつかめればと考えたからです。

2014年(9月〜)

改善度(2014END)20%

佐川のインターンは2014年9月からはじまりました(〜同12月)。最初は現場研修でしたが、はじめて数日ですぐ気づきます。森の中に隠れた農家の直売所なのに、たくさんのお客様が梨を買いにいらっしゃること代表阿部の梨作りにかける思いがあふれて決壊していること。そして、それらとは裏腹に、業務のオペレーションは我流で、ムダや機会損失が発生しているということです。改善できそうなところが次から次へと目に飛び込みました。それまで目をつぶってきた内側(経営)にこそ、改善の大きな余地がありそうだと気づきます。

そこで佐川は、当初の販売促進と集客ではなく、インターンのテーマを経営体質改善そのものに据えることを提案しました。100件の小さい改善を実施すれば、変化し続ける習慣が残るのではないかと考え、「プロミス100」というプロジェクト名をつけました。残り3ヶ月250時間程度で100件ですから、2-3時間でできることをかき集めました。

当時は経営改善の前提になる(まともに使える)数字がありませんでしたし、佐川も農家の経営について無知だったので、とにかく目についた簡単なことから着手しました。事務所を掃除(#010)したり、資材の置き場に表示(#079)をつけたり、店頭のPOP(#)を作ったり。。。その頃のスタッフには、何のために佐川が来て何が起こっているのか、チンプンカンプンだったと思います。ときには1人で、ときにはみんなで、改善活動を進めました。最終的には期間中に約70件実施し、インターンは終了しました。

阿部とプロジェクトを進めていく中で、梨作りに捧げる情熱と、体質改善に本気で向き合う意気込みに、佐川自身も強く影響を受けました。また、当時すでに認められていた阿部梨園でもこれだけ余地があるのなら、経営体質は多くの生産者にとって共通課題であり、そこに伸びしろがあるのではないかと思いました。インターン終了後もこの活動を仕事として続けたいと阿部に売り込み、フルタイムの従業員として就職しました。

2015年

改善度(2015END)40%

実質1年目だったので、とにかく手さぐりを続けました。インターンでは触れられなかった、会計や労務といった核心の部分も預かりました。ルールや手続きから見直しました。阿部と佐川のコミュニケーションや2人での意思決定プロセスも手さぐりだったので、とにかく本音でぶつかることに多くの時間を使いました。

インターン時に、経営判断の材料になる情報がないことに苦労したので、2015年こそはと数字を収集する1年にしました。全スタッフの日々の作業ごとの所要時間を記録(#060)するようにしました。店頭にタブレットレジ(#076)を導入して商品ごとの販売データを集計(#006)したり、梨の収穫量を計測(#066)して記録したりしました。

また、佐川にお給料を支払うようになったので、収益も必要でした。カタログ(#093)ウェブサイト(#089)を作り直し、シーズン中の情報発信も手厚くすることで、少しでも自然流入につながるよう努力しました。佐川の知人友人が、食べたこともない梨を注文して買い支えてくれたことには助けられました。今でも頭が上がりません。佐川も店頭に立ち、電話で注文を受け、販売オペレーションを経験しながら、直売の酸いも甘いも体感しました。おかげさまで売上も伸び、2016年を迎えることができました。

2016年

改善度(2016END)60%

2016年は、2015年に取得した数字を使って、作業計画や商品設計(#067)、営業目標などを立てられるようになりました。予実管理感がちょっと出てきました。会計(#028)労務(#135)もクラウドサービスを導入し、負担の軽減と業務品質のレベルアップを両立できました。

佐川が経営と販売を担当して、阿部は現場管理に重心を置く、分業体制が板につくようにもなりました。経営の基盤が安定したことで、頼もしいスタッフが仲間に加わってくれるサイクルが回り始めた年でもあります。

商品カタログを一新し、パンフレット(#094)を新たに作ることで、ブランド感が萌芽しました。合わせて、オンラインショップ(#091)注文用紙(#085)返信用封筒(#086)など、あの手この手でお客様の負担を減らす作戦を実施しました。おかげで期待以上の勢いで注文が急増し、振り返ると99%以上を阿部梨園ブランドでお買い上げいただくというメモリアルな年になりました。

経営改善に向き合う農園として少しずつ認知されるようになり、視察や外部イベントなど、地域外の方との交流が増えるようになります。私たちの視野も広がりました。

2017年

改善度(2017END)80%

2015年、2016年と2年分のデータがそろったので、数字のトレンドがわかるようになりました。めでたく経営の全体像がようやく掌握できたわけです。

佐川と同時期に阿部梨園に就職し、初の正規従業員だったSくんが事情で退職することになりました。信頼してきた大切なスタッフと離れる悲しさ、積み上げてきたものがリセットされる脱力感もありました。結果的に、それまでアルバイトで手伝ってくれていた小林を正規雇用転換し、チーフとして現場リーダーを任せました。小林は素直で責任感が強いだけでなく、マネジメントや最適化が好きな性格です。阿部の補佐として、佐川が言い続けてきたことを現場でどんどん実現してくれています。佐川が現場に介入しなくても、小林に適切な気付きだけ与えるだけで大半の改善が済むようになりました。良い人材の獲得は経営改善のゴールだと思い知ります。

販売面では、過去2年に着手したことを仕上げる年になりました。2017年の宣材は確定版として数年使いまわすつもりで作り込みました。準備万端で迎えたシーズンでしたが、8月は例年にないほどの天候不良で、収穫時期が大幅に遅れました。お客様の需要時期とのずれに振り回され、心理的にも体力的にも消耗し、シーズン終盤まで尾を引くほど苦しい1年でした

やれることはやり切ったという感覚と、オフシーズンに余裕が見込めることから、これまでの経営改善の実例を公開するプロジェクトに着手しようという考えに至りました。11月から年末にかけてクラウドファンディングで資金調達を実施し、多くのご支援を預かりました。メディアをはじめ業界内外から想像以上の反響があり、想定より話が大きくなってしまったことに責任を感じつつも、それだけのニーズがあったのだと思い知ります。

2018年

2018年、このサイトを作るに至ります。